分子レベルのふるい分け
薄膜分離技術は将来の化学・石油産業のプロセスを簡略化し、エネルギー消費を劇的に削減するための有望な技術といわれており、イーセップ株式会社(以下同社)は、簡易、エコかつ高効率な分離のための膜分離技術の開発と提供する事業を行っています。同社開発の、セラミック分離膜は、「高精密に細孔径が制御された分離膜層を高水準の再現性で製造可能」とする特徴があるとのことです。
さらに同社のウェブサイトによると、「膜孔径をナノ(nm)レベルで精密制御したセラック分離膜は、従来の分離膜にはない分子レベルの分離が可能であり、さらに石油化学産業用途に於いて幅広く利用可能な高い耐久性も併せ持ちます。当社はゼオライト膜やシリカ膜を中心とした1nm以下の細孔を精密制御したセラミック製の機能性分離膜、および各種機能性分離膜を製造するためのナノ多孔質基盤の製造ノウハウも有しています。」と、述べています。
同社のセラミック分離膜の用途は極めて幅広いように思われますが、現在直ぐに適用できそうな領域に化学工場から出る使用済の有機溶剤の再利用や、水素運搬媒体から水素を抽出する手段などが挙げられます。 因みに、米国ジョージア工科大学の研究者が2016年に英科学誌ネイチャーに発表した論文によると、米国で消費されるエネルギーの約30%は工業分野で、その半分を分離工程が占めているそうで、膜を使えばこの90%を減らすことが出来るという試算もあるようです(2023年4月9日付東京新聞)。これまでの蒸留を分離を膜による分離に置き換えることが出来れば化学工場の小型化や使用エネルギーの大幅節減、更にはCO₂削減に繋げられそうです。
大きな可能性を秘めた同社の製品とさらなる研究開発において、イーセップ社の益々の活躍を期待しています。(AS)
